SHIN LIFE DESIGN

結論
営業で大切なのは、たくさん質問することではありません。
お客様が安心して本音を話せるように、相手の気持ちに寄り添いながら質問することです。
営業担当者が知りたいことを一方的に聞くのではなく、お客様自身もまだ整理できていない悩みを、一緒に見つけていく。そのために質問があります。
良い質問とは、答えを急がせる質問ではありません。
お客様の心の中にある不安や迷いを、少しずつ言葉にしていただく質問です。

お客様は最初から本当の悩みを話すわけではない
お客様が最初に口にする希望が、本当の悩みとは限りません。
「もう少し安くなりませんか」
「ほかの商品も見せてください」
「家族と相談してから決めます」
営業をしていると、このような言葉を何度も耳にします。
経験の浅い頃は、私はその言葉をそのまま受け止めていました。価格の話が出れば値引きを考え、ほかの商品を見たいと言われれば、次々と商品を説明していました。
しかし、実際には価格だけが問題ではないことがよくあります。
本当に気になっているのは、家族の意見かもしれません。購入後に後悔しないかという不安かもしれません。何を基準に選べばよいのか分からず、決断できないのかもしれません。
表面に出た言葉だけに対応しても、本当の悩みが残ったままでは、お客様は安心して決めることができません。

質問する前に、まず受け止める
お客様の本音を知ろうとして、いきなり「なぜですか」と聞くと、尋問のように感じさせてしまうことがあります。
質問の前に必要なのは、相手の言葉を受け止めることです。
「そうですよね。大切なことですから、迷われるのは当然だと思います」
「ご家族とも相談して、納得して決めたいということですね」
このように、まず相手の気持ちを言葉にして返します。
自分の気持ちを理解してもらえたと感じると、お客様は少しずつ本音を話してくださるようになります。
営業担当者が質問する権利は、名刺交換をしただけで得られるものではありません。相手の話を丁寧に聞き、信頼してもらうことで初めて得られるものだと、私は考えています。

「なぜ」よりも答えやすい質問を使う
質問には、相手が答えやすい聞き方と、答えにくい聞き方があります。
たとえば「なぜ決められないのですか」と聞かれると、お客様は責められているように感じるかもしれません。
そこで、次のように聞き方を変えます。
「今、一番気になっているのはどの部分でしょうか」
「ご家族が心配されそうなのは、価格でしょうか。それとも内容でしょうか」
「決めるために、あとどのような情報があれば安心できますか」
このような質問であれば、お客様は自分の気持ちを整理しながら答えることができます。
大切なのは、営業担当者が用意した答えに誘導することではありません。お客様の中にある答えを、一緒に探していくことです。
墓石販売で学んだ「背景を聞く」ことの大切さ
私が長年携わってきた墓石の販売では、同じ商品を買う場合でも、お客様一人ひとりの事情は大きく異なります。
亡くなられた方への思い、ご家族の考え、予算、宗教や地域の習慣、将来そのお墓を誰が守っていくのか。表面上は「墓石を選ぶ」という話でも、その背景には家族の歴史と大切な感情があります。
だから私は、商品の説明を急がず、まずお客様のお話を聞くようにしていました。
「どなたのためのお墓でしょうか」
「ご家族の中で大切にしたいと話されていることはありますか」
「完成した時、どのようなお墓になれば良かったと思えそうですか」
こうした質問を重ねると、お客様が本当に望んでいることが見えてきます。
豪華さを求めているように見えて、実は亡くなった方らしい落ち着いたお墓を望んでいることもあります。価格を心配しているように見えて、実は家族全員が納得できる説明を必要としていることもあります。
本当の悩みが分かれば、無理に売り込む必要はありません。その悩みに合った提案をすればよいのです。
質問した後の沈黙を恐れない
良い質問をした後、お客様がすぐに答えないことがあります。
この沈黙に耐えられず、営業担当者が自分から話し始めてしまうことがあります。しかし、お客様は答えに困っているのではなく、心の中を整理しているのかもしれません。
私は、質問した後は相手の表情を見ながら、答えを待つことを大切にしてきました。
沈黙も、商談の一部です。
お客様が考える時間を奪わない。言葉が出てくるまで待つ。その姿勢もまた、相手を尊重することだと思います。
部下に伝えていた三つのこと
八王子支店長として部下を指導する立場になってから、質問について特に三つのことを伝えていました。
一つ目は、質問する目的を忘れないことです。
自分が売るための情報を集めるのではなく、お客様が納得できる答えを見つけるために質問します。
二つ目は、質問したら最後まで聞くことです。
途中で話を遮ったり、先回りして結論を決めたりしてはいけません。
三つ目は、聞いた内容を提案に反映することです。
せっかく本音を話していただいても、最初から用意していた商品を勧めるだけでは、質問した意味がありません。
「先ほどご家族の皆様が納得できることを大切にしたいとおっしゃっていましたので、この方法はいかがでしょうか」
このように、お客様の言葉と提案を結び付けることで、「自分のために考えてくれた提案だ」と感じていただけます。

まとめ
お客様の本当の悩みは、最初からはっきり言葉になっているとは限りません。
だから営業には、相手の気持ちを受け止め、答えやすい質問をし、焦らずに待つ力が必要です。
質問は、お客様を追い込むためのものではありません。
お客様自身が何を大切にしたいのかを整理し、納得できる選択にたどり着くためのものです。
営業とは、正解を押し付ける仕事ではありません。お客様と一緒に、その人にとっての正解を見つけていく仕事なのです。


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