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若い社員が、任された仕事を最後までやり遂げられるようになる。
管理者にとって、これほど嬉しい成長はありません。
しかし、今までと同じ仕事だけを任せ続けていては、それ以上の成長は期待できません。
次の段階では、これまでより少し難しい仕事を任せる必要があります。
ところが、仕事の難易度を急に上げすぎると、若い社員は自信を失ってしまいます。反対に、失敗を恐れて簡単な仕事ばかり任せていると、本人の成長を止めてしまいます。
今回は、若い社員に少し難しい仕事を任せるとき、管理者は何を考え、どのように伝えるべきかをお話しします。
成長に必要なのは「少し背伸びをすれば届く仕事」
若い社員を成長させるために必要なのは、本人の能力を大きく超えた仕事ではありません。
今の力では少し難しいけれど、準備と努力をすれば達成できる仕事です。
たとえば、これまで先輩と一緒に行っていたお客様への提案を、今度は本人を中心に進めてもらう。
いつもは決められた資料を使って説明していた社員に、相手に合わせた提案内容を考えてもらう。
このように、今までの経験を土台にしながら、責任の範囲を少し広げます。
最初から完璧にできる仕事ではありません。
考える場面、判断する場面、周囲へ相談する場面が含まれていることが大切です。

難しい仕事を任せる前に確認すること
管理者は、本人の意欲だけで仕事を任せてはいけません。
次の点を確認する必要があります。
- これまでの基本業務を安定して行えているか
- 分からないことを自分から質問できるか
- 報告・連絡・相談ができているか
- 期限を意識して仕事を進められるか
- ミスが起きたときに隠さず報告できるか
特に重要なのは、分からないことを質問できるかどうかです。
少し難しい仕事には、必ず本人だけでは判断できない場面が出てきます。
そのときに相談せず、自分だけで抱え込んでしまうと、小さな問題が大きな失敗につながります。
「一人で全部できる社員」ではなく、「必要なときに周囲の力を借りられる社員」になっているかを見極めます。
なぜ、その人に任せるのかを伝える
管理者が仕事を任せるとき、単に「今度はこれをやってみて」と伝えるだけでは不十分です。
本人は、
「人が足りないから自分に回ってきただけではないか」
「失敗したら評価が下がるのではないか」
と不安になることがあります。
そこで、なぜ本人に任せるのかを具体的に伝えます。
「これまでの仕事で、お客様への説明が丁寧にできていた。次は、自分で提案内容を考えるところまで任せたい」
「以前のミスのあと、確認方法を改善して同じ失敗を繰り返さなかった。その成長を見て、今回はこの仕事を任せようと思った」
このように、本人のどの行動を評価したのかを伝えます。
若い社員は、自分の成長を管理者が見てくれていたことを知ると、新しい仕事に挑戦する勇気を持てます。

任せる範囲と相談する範囲を明確にする
少し難しい仕事を任せる場合、すべてを本人の判断に任せる必要はありません。
最初に、本人が判断してよい範囲と、必ず管理者へ相談する範囲を決めます。
たとえば、
- 提案内容の下書きは本人が作る
- 金額や納期を変更するときは管理者へ相談する
- お客様から苦情が出た場合はすぐに報告する
- 最終提出前に管理者が一度確認する
このように決めておけば、本人も安心して行動できます。
「任せる」と「放置する」は違います。
任せるとは、責任を押しつけることではありません。本人が自分で考えられる範囲を広げながら、必要な場面では管理者が支えることです。
途中確認は「監視」ではなく「支援」
難しい仕事を任せたあと、管理者は途中経過を確認します。
ただし、細かく何度も確認すると、本人は「信用されていない」と感じてしまいます。
一方で、最後まで何も確認しないと、問題が起きたときに修正できません。
そこで、任せる段階で確認の時期を決めておきます。
「最初の案ができた時点で一度見せてください」
「水曜日の午後に進み具合を確認しましょう」
このように事前に伝えておけば、途中確認が監視ではなく、仕事を成功させるための約束になります。
確認するときは、「大丈夫か」と聞くだけでは不十分です。
- 今どこまで進んでいるか
- 困っていることは何か
- 判断に迷っていることはないか
- 期限までに終わる見通しがあるか
この4点を確認します。

管理者が答えを先に言いすぎない
若い社員から相談を受けると、経験のある管理者はすぐに答えを教えたくなります。
しかし、毎回答えを教えてしまうと、本人が考える機会を奪ってしまいます。
まずは、
「あなたはどうしたらよいと思いますか」
「その方法を選んだ理由は何ですか」
と聞いてみます。
本人の考えが完全でなくても、すぐに否定してはいけません。
良い部分を認めたうえで、足りない視点を伝えます。
管理者の役割は、自分と同じ答えを出させることではありません。
若い社員が、自分で考え、判断し、その結果から学べるように支えることです。
失敗しても、挑戦したことまで否定しない
少し難しい仕事を任せれば、失敗する可能性はあります。
そのとき、結果だけを見て強く叱ると、本人は「難しい仕事には挑戦しない方がよい」と考えるようになります。
もちろん、失敗の原因を確認し、改善することは必要です。
しかし、挑戦したことと、仕事の進め方の問題は分けて考えます。
「最後まで取り組んだことは評価している。ただ、今回は途中の確認が遅かった。次は早めに相談しよう」
このように伝えれば、本人は自信を失わず、次の改善へ進めます。
私が管理者として大切にしていたこと
私は長年、営業現場で若い社員を育ててきました。
支店長として部下を持ったとき、最初から何でもできる社員はいませんでした。
仕事が遅い社員もいれば、お客様との会話が苦手な社員もいました。
しかし、日々の仕事をよく見ていると、それぞれに必ず成長の兆しがあります。
以前より報告が早くなった。
お客様への説明が分かりやすくなった。
失敗したあと、自分で改善方法を考えられるようになった。
私は、その小さな変化を見逃さないようにしていました。
そして、「今なら、もう一段上の仕事を任せられる」と判断したときに、少し難しい仕事を渡しました。
大切なのは、管理者の都合で仕事を押しつけることではありません。
本人の成長を見たうえで、「あなたなら、ここまでできる」と信じて任せることです。
今回の実践課題
あなたの職場で、成長している若い社員を一人思い浮かべてください。
次の項目を書き出してみましょう。
- その社員が以前より成長した点
- 次に任せたい、少し難しい仕事
- 本人に任せる判断の範囲
- 管理者へ相談してほしい範囲
- 途中確認を行う日時
- 仕事を任せる理由として、本人へ伝える言葉
難しい仕事を任せる前に、管理者自身がここまで整理しておけば、本人も安心して挑戦できます。
まとめ
若い社員に少し難しい仕事を任せるときは、次のことが大切です。
- 少し背伸びをすれば達成できる仕事を選ぶ
- 基本業務や報告・相談の力を確認する
- なぜ本人に任せるのかを具体的に伝える
- 判断する範囲と相談する範囲を決める
- 途中確認の時期を事前に約束する
- 答えを教える前に、本人の考えを聞く
- 失敗しても、挑戦したことまで否定しない
人は、自分を信じて仕事を任せてくれた人の期待に応えようとします。
管理者の「あなたならできる」という言葉が、若い社員を次の段階へ進ませます。
ただし、その言葉には、日頃から本人の仕事をよく見ているという責任が伴います。
仕事を任せることは、管理者が若い社員の可能性を信じることです。
その信頼が、次の成長を生み出します。




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