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結論
売れる営業担当者ほど、お客様の話を少し聞いただけで、すぐに答えを出そうとはしません。
なぜなら、お客様が最初に口にした要望が、本当に解決したい問題とは限らないからです。
まず話を最後まで聞き、その悩みが生まれた背景や事情を確認する。そのうえで、お客様に合った提案を考える。
一見すると遠回りに見えますが、これが信頼される営業への一番の近道です。

営業は答えを急ぎやすい
営業担当者は、お客様から質問や相談を受けると、すぐに答えなければならないと思いがちです。
商品知識が豊富で、経験を積んだ人ほど、
「その場合はこちらの商品がおすすめです」
「それなら、この方法で解決できます」
と、早い段階で結論を出してしまうことがあります。
確かに、質問に素早く答えることは大切です。しかし、早く答えることと、正しい提案をすることは同じではありません。
お客様の話を十分に聞かないまま提案すると、表面的な要望には応えられても、その奥にある本当の悩みを見落としてしまいます。
最初に出てくる要望が本音とは限らない
お客様は、自分が抱えている問題を最初から正確に整理して話せるとは限りません。
例えば、お客様が「できるだけ安い商品が欲しい」と話したとします。
そこで営業担当者が、すぐに最も安い商品を紹介したらどうなるでしょうか。
話をよく聞いてみると、本当に気にしていたのは価格だけではなく、
「予算を家族に説明できるか不安」
「購入後に追加費用が発生しないか心配」
「高い商品を勧められるのではないかと警戒している」
という気持ちかもしれません。
この場合に必要なのは、ただ安い商品を提示することではありません。
価格の違いや追加費用の有無を分かりやすく説明し、お客様が安心して判断できるようにすることです。
お客様の最初の言葉だけで答えを決めてしまうと、こうした本当の不安にはたどり着けません。

私も「答えを急がないこと」を大切にしてきた
私は約30年間、営業の仕事に携わってきました。
営業社員として入社し、八王子支店長、取締役部長、常務取締役、専務取締役を経験しましたが、役員になってからもお客様との関係を大切にし、営業の現場から完全に離れることはありませんでした。
長く営業を続ける中で実感したのは、経験が増えるほど「分かったつもり」になる危険があるということです。
過去に似た相談を何度も受けていると、
「このお客様も、きっと同じだろう」
と考えてしまいます。
しかし、お客様が違えば、生活環境も家族構成も予算も考え方も違います。似ているように見える相談でも、その背景は一人ひとり異なります。
だからこそ私は、過去の経験だけで答えを決めず、まずお客様の話を聞くことを心がけてきました。
経験は、答えを決めつけるために使うものではありません。
お客様へ何を確認すべきかを考え、より良い提案を組み立てるために使うものです。
すぐに提案する前に確認したいこと
お客様から相談を受けたときは、商品を説明する前に、次のような点を確認することが大切です。
なぜ、その商品を探しているのか
購入する理由やきっかけを聞くことで、お客様が何を大切にしているのかが見えてきます。
何に困っているのか
お客様が避けたいことや不安に感じていることを確認します。希望を聞くだけでなく、心配していることを聞くのがポイントです。
誰と相談して決めるのか
本人だけで決めるのか、家族や会社の関係者にも相談するのかによって、必要な説明や資料は変わります。
いつまでに必要なのか
期限が分かれば、お客様に無理のない進め方を提案できます。
どのような状態になれば満足なのか
商品を買うこと自体が目的ではありません。購入した結果、お客様がどのような状態になりたいのかを確認することが重要です。
こうした質問を重ねることで、最初に聞いた要望とは違う課題が見えてくることがあります。

「少し考えさせてください」は悪い言葉ではない
営業担当者の中には、その場ですぐ答えられないことを恥ずかしいと感じる人もいます。
しかし、確認が必要なときに曖昧な回答をするほうが、お客様からの信頼を失います。
分からないことがあれば、
「大切なことですので、確認してから正確にお答えします」
「お客様に合う方法を考えたいので、少しお時間をください」
と正直に伝えればよいのです。
その場しのぎの回答よりも、約束した期限までに正確な答えを返すほうが、はるかに誠実な対応です。
すぐ答えないことは、知識がないことではありません。
お客様に対して責任を持って答えようとしている姿勢でもあります。
売ることを急ぐと信頼を失う
営業担当者が契約を急いでいることは、お客様にも伝わります。
話を十分に聞かずに商品説明を始めたり、判断を急がせたりすると、お客様は「自分のことより、売上を優先している」と感じます。
一方で、すぐに商品を勧めず、
「もう少し詳しくお聞かせいただけますか」
「一番心配されているのは、どの部分でしょうか」
と尋ねる営業担当者には、安心して話せます。
お客様は、自分の話をきちんと聞いてくれた人から買いたいと思うものです。
契約を急がない姿勢が信頼につながり、結果として契約へ結びつくことも少なくありません。
部下の相談にも同じことが言える
答えを急がない姿勢は、お客様への営業だけでなく、部下の育成にも必要です。
部下から相談を受けた上司が、話の途中で、
「それは、こうすればいい」
と答えてしまうと、部下が本当に困っていることを見落とす可能性があります。
本人は営業方法について相談しているように見えても、実際にはお客様との関係に悩んでいたり、自信を失っていたりするかもしれません。
まず最後まで話を聞き、
「あなたは、どうしたいと思っているのか」
「どの部分が一番難しいと感じているのか」
と確認することが大切です。
上司が答えを与えるだけでは、部下は自分で考える力を身につけられません。
すぐに答えを教えず、一緒に考えることも人材育成の一つです。

まとめ
売れる営業担当者ほど、すぐに答えを出しません。
お客様が最初に口にした要望だけで判断せず、その背景にある事情や不安まで丁寧に確認します。
大切なのは、回答の速さを競うことではありません。
お客様にとって本当に必要な答えを見つけることです。
営業経験が長くなるほど、自分の経験だけで判断してしまう危険があります。だからこそ、目の前のお客様を一人の人として見て、初めて相談を受ける気持ちで話を聞く必要があります。
すぐに答えを出さない。
分からないことは確認する。
そして、お客様と一緒に最善の方法を考える。
その誠実な積み重ねが信頼を生み、長く選ばれる営業担当者をつくるのです。



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