SHIN LIFE DESIGN

結論
営業で最も大切な能力は、流暢に話す力ではありません。
お客様の話を丁寧に聞き、その言葉の奥にある悩みや希望を理解する力です。
営業というと、多くの人は「説明が上手な人」「話術に優れた人」「人を説得できる人」を想像するかもしれません。
しかし、私が約30年間営業の仕事に携わり、トップ営業、支店長、そして会社役員まで経験する中でたどり着いた答えは違います。
営業で本当に大切なのは、自分が話すことよりも、お客様の話を聞くことです。
お客様は、営業社員の商品説明を聞くためだけに会っているわけではありません。
自分の悩みを理解してもらい、自分に合った解決方法を一緒に考えてもらうために会っているのです。
だからこそ、売れる営業社員ほど一方的に話しません。
まず、お客様の話を聞くことから始めます。

理由
お客様が口にする言葉と、本当に求めているものが、必ずしも同じとは限りません。
例えば、お客様が「もう少し安い商品はありませんか」と言ったとします。
この言葉だけを聞けば、価格が一番の問題だと考えてしまいます。
しかし、丁寧に話を聞いてみると、本当の理由は別のところにあるかもしれません。
家族に相談せずに決めることへの不安かもしれませんし、価格に見合う価値があるのか判断できていないのかもしれません。
あるいは、商品を気に入ってはいるものの、営業社員に強引に勧められているように感じ、少し距離を置こうとしている可能性もあります。
このとき、価格の話だけを続けても、お客様の不安は解消されません。
「何が一番気になっていますか」
「ご家族とは、どのようなお話をされていますか」
「決めるうえで、どのような点に迷われていますか」
このように、お客様が話しやすい質問をしながら、答えを急がずに聞くことが必要です。
営業社員が聞く姿勢を持つことで、お客様自身も、自分が何に迷っているのかを整理できるようになります。
そして、お客様の本当の悩みが分かって初めて、その人に合った提案ができるのです。

具体例
私は営業未経験で墓石販売会社に入社しました。
入社したばかりの頃は、商品知識を覚え、上手に説明できるようになることが営業だと思っていました。
石の種類、産地、価格、加工方法、耐久性など、覚えなければならないことは数多くありました。
もちろん、商品知識は必要です。
しかし、いくら詳しく説明しても、お客様の心が動かないことがありました。
こちらが一生懸命に話せば話すほど、お客様との距離が遠くなってしまうことさえありました。
そこで私は、説明することより先に、お客様の話を聞くようにしました。
墓石を購入するお客様には、それぞれの事情があります。
亡くなった方への思い、ご家族との関係、将来のお墓の管理に対する不安、宗教や地域の習慣、そして予算の問題。
同じ商品を検討しているように見えても、その背景は一人ひとり違います。
私は、お客様がどのような気持ちで相談に来られたのかを理解しようと努めました。
すぐに商品説明を始めるのではなく、亡くなった方のことや、ご家族がどのようなお墓を望んでいるのかを聞きました。
すると、お客様の表情や話し方が少しずつ変わっていきました。
「実は、家族の中で意見がまとまっていないんです」
「亡くなった父が、生前こんなことを話していました」
「子どもたちに負担を残したくないんです」
こうした言葉は、商品カタログを説明しているだけでは出てきません。
お客様の話を聞き、その気持ちを受け止めて初めて聞ける言葉です。
その言葉の中に、お客様にとって本当に必要な提案の答えがありました。
私は、会社が売りたい商品を勧めるのではなく、お客様の事情や考え方に合う選択肢を提案するようになりました。
場合によっては、その場で契約を求めず、ご家族ともう一度相談していただくこともありました。
営業成績だけを考えれば、すぐに契約を取ろうとするほうが効率的に見えるかもしれません。
しかし、お客様が納得しないまま契約を進めれば、後から不満や後悔が残ります。
一方で、お客様の話をしっかり聞き、納得できる答えを一緒に探せば、信頼が生まれます。
その信頼が契約につながり、さらに別のお客様をご紹介いただくことにもつながりました。
私が入社3年目にトップ営業になれた理由は、特別に話が上手だったからではありません。
お客様を説得しようとするのではなく、お客様の話を聞き、悩みを理解することを大切にしたからだと思っています。

部下に伝えていたこと
八王子支店長になり、部下を指導する立場になってからも、私は「まず聞くこと」の大切さを伝え続けました。
営業成績が伸び悩んでいる社員の中には、真面目で商品知識も豊富なのに、なかなか契約につながらない人がいました。
そのような社員の接客を振り返ってみると、説明することに一生懸命になりすぎている場合がありました。
お客様が話している途中で説明を始めてしまったり、お客様の質問に答えたつもりでも、本当の不安には答えられていなかったりするのです。
私は部下に、説明の上手さだけを求めませんでした。
「今日は、お客様からどんな話を聞けたのか」
「お客様は、何を一番心配していたのか」
「その言葉の裏に、どのような気持ちがあったと思うか」
こうしたことを一緒に考えました。
営業は、お客様を言葉で言い負かす仕事ではありません。
お客様自身もまだ整理できていない悩みを、一緒に見つけていく仕事です。
そのためには、営業社員が答えを急いではいけません。
沈黙を怖がらず、お客様が自分の言葉で話し始めるまで待つことも必要です。

聞くことは、相手を尊重すること
人は、自分の話を本気で聞いてくれる人に心を開きます。
これは営業に限ったことではありません。
職場の部下との関係でも、家族や友人との関係でも同じです。
相手の話を途中で遮り、自分の考えを押しつければ、相手は「この人には何を言っても分かってもらえない」と感じます。
反対に、最後まで話を聞き、相手の立場を理解しようとすれば、たとえ意見が違っても信頼関係を築くことができます。
聞くという行為は、単に黙っていることではありません。
「あなたの話を大切に受け止めています」という意思を示すことです。
相手の話に関心を持ち、分からないことは質問し、自分の理解が合っているかを確かめる。
その積み重ねが信頼になります。
営業の世界では、話し上手な人が目立ちます。
しかし、長くお客様から信頼されるのは、聞き上手な人です。
まとめ
営業で大切なのは、一方的に商品の魅力を話すことではありません。
まず、お客様の話を聞くことです。
お客様が何に悩み、何を不安に思い、どのような結果を望んでいるのか。
それを理解しないままでは、本当に役立つ提案はできません。
営業とは、お客様を説得する仕事ではなく、お客様と一緒に答えを探す仕事です。
その出発点にあるのが「聞く力」です。
話すことに自信がないから、自分には営業が向いていない。
そう考えている人がいるかもしれません。
しかし、流暢に話せることだけが営業の才能ではありません。
人の話を真剣に聞き、その気持ちを理解しようとできる人には、営業として大きな可能性があります。
私自身、営業未経験からのスタートでした。
それでも、お客様の話を聞き、お客様の立場で考えることを積み重ねた結果、トップ営業になることができました。
営業で最も大切なのは、巧みな話術ではありません。
目の前の人に関心を持ち、その人の言葉に耳を傾けること。
私は約30年間の営業人生を通して、それを学びました。



コメント