はじめに
昭和から令和までの社会や価値観の変化は、葬儀の形式や風習に大きな影響を与えて来ました。
昭和時代の葬儀
親族や近所、知人など多くの人が集まる「一般葬」が主流でした。
自宅で葬儀を行う「自宅葬」が一般的で、地域の助け合い(相互扶助)が重要視されていました。
華やかな祭壇や霊柩車を用意し、盛大に故人を送り出すことが供養と考えられていました。
平成〜令和への変化
平成に入ると、生活スタイルや価値観の多様化、都市化、核家族化が進みました。
「家族葬」や「直葬」など、近親者のみで行う小規模な葬儀が増加しました。
葬儀の簡素化が進み、従来のような大規模な弔問や会食が減りました。
令和時代の特徴
新型コロナウイルスの影響で「三密を避けるため、さらに葬儀の最小化が加速しました。
オンライン葬儀や1日葬(通夜を行わず1日で済ませる形式)など、新しいスタイルが登場しました。
墓じまいや樹木葬、海洋散骨など、多様な埋葬方法も選ばれるようになっています。
価値観の多様化により、「自分らしい」供養や遺族の負担軽減を重視する傾向が強まっています。多様化の尊重、個人主義の広がり、生活の変化(共働き・核家族化)、経済的な理由など背景にあります。
昭和的な「みんなで助け合う」価値観から、令和的な「個々の事情や希望に合わせる」価値観の移行が見られます
昭和時代の葬儀の葬儀
引用:総合総裁あお吉
自宅葬が主流
昭和時代の日本では、葬儀は主に自宅や寺院で行われるのが一般的でした。特に戦後の経済成長期には、庶民の生活が豊かになり、親族や近隣住民、知人など多くの人を招いて盛大な葬儀を行うことが供養と考えられていました。
参列者の範囲と地域社会の役割
親族だけでなく、ご近所や職場関係など、故人と縁のある多くの人が参列する「一般葬」が主流でした。
近所の人々や「隣組」が炊き出しや受付、会場設営など、葬儀の手伝いをするのが習慣でした。
祭壇と儀式の変化
都市部では自宅での告別式が広まり、白布をかけた祭壇(白布祭壇)が中心となりました。祭壇の規模や種類にランクが生まれ、経済状況によって選択肢が広がりました。
仏教の宗派ごとに異なる読経や儀式が行われ、僧侶が読経して故人の冥福を祈るのが一般的でした。
埋葬方法の変化
昭和初期までは土葬も行われていましたが、戦後は火葬の普及が進み、次第に火葬が主流となりました。
葬列を組んで棺を運ぶ伝統は徐々に姿を消し、火葬城への移動や告別式に重点が置かれるようになりました。
葬儀の流れ(一例)
死亡後、遺体を北枕で仏壇の前に安置し、僧侶が「枕経」をあげる。
通夜を自宅で行い、家族や近所の人が参列し、食事(御膳)を共にする。
葬儀当日、家で「内葬」をし、棺を寺院へ運び「本葬」を行う。その後、火葬場で火葬。
火葬後は自宅に戻り、仏壇の前で「骨上げ経」初七日法要を行う。
葬儀の社会的背景
昭和初期から戦中にかけては戦争や空襲の影響で葬儀が簡素化されることもあり、身元不明者は仮火葬されることもありました。
戦後は経済成長とともに祭壇や霊柩車が一般家庭でも使われるようのなり、葬儀がより華やかになりました。
遺骨や遺影の意識
当初は遺骨へのこだわりは今ほど強くありませんでしたが、戦争を契機に遺骨への思いが強まっていきました。
葬儀後は自宅の壁に遺影を飾り、先祖として祀る習慣が根付きました。
引用:タウンニュース
平成〜令和への変化
平成時代の葬儀
一般葬から家族葬への移行
平成初期は、親族だけでなく友人・知人・会社関係など幅広い参列者を迎える「一般葬」が主流でした。しかし、時代が進むにつれ「家族葬』への関心が高まり、親族中心の小規模な葬儀が増加しました。
その1 終活の普及
平成21年から「終活」という言葉が広がり、自分らしい最期を迎えたいという意識が高まりました。これにより、葬儀の形式や規模を事前に考える人が増えました。
その2 葬儀社主導の体制へ
ご近所や会社が葬儀の手伝いをする文化が薄れ、葬儀社が全てを請け負う体制が確率。自宅や寺院よりも、バリアフリー化された葬儀専用式場の利用が一般的になりました。
その3 無宗教化・多様化
都市部を中心に、菩提寺を持たない家庭が増え、宗教や宗派に縛られない葬儀が選択されるようになりました。
引用:平成会館
令和時代の葬儀
その1 家族葬が新しい一般的へ
令和に入ると「家屋葬」がさらに定着し、これが現代の標準的な葬儀とみなされるようになりました。
その2 コロナ禍による急速な縮小化と変化
新型コロナウイルス感染症の影響で「三密」を避けるため、参列者を最小限に絞る傾向が加速。会食や通夜振る舞いも減少し、オンライン葬儀やウエブ中継といった新しい形も登場しました。
その3 無宗教葬・自由葬の増加
宗教儀式にとらわれず、故人の趣味や個性を反映した「お別れ会」や「自由葬」が増えています。例えば、好きなスポーツチームのカラーで祭壇を飾ったり、思い出の品や写真を展示するなど、パーソナライズされた葬儀が行われています。
その4 テクノロジーの活用
オンライン中継やデジタル映像、音楽など、テクノロジーを活用した演出が一般的。遠方の親族や友人もリモートで参列できる仕組みが広がりました。
その5 葬儀業界のプロ化とトータルサポート
葬儀の企画・進行からアフターケアまでを一括して提供する葬儀社が増え、家族の負担軽減が進んでいます。
その6 比較表:平成と令和の葬儀スタイル
時代 | 主流スタイル | 規模 | 参列者の範囲 | 宗教色 | 特徴的な変化 |
平成 | 一般葬→家族葬 | 中〜小規模 | 親族+友人・会社 | 仏教中心→多様化 | 終活、無宗教化、葬儀社主導 |
令和 | 家族葬中心 | 小規模 | 親族中心 | 無宗教・自由葬増 | コロナ禍で縮小、オンライン化 |
引用:西田葬儀社
引用:西田葬儀社
令和時代の葬儀の特徴
家族葬の一般化と葬儀の縮小化
令和時代の葬儀は、家族やごく近い親族のみで行う「家族葬」が主流となり、「家族葬こそが令和の一般葬」とまで言われています。
コロナ禍の影響で葬儀の縮小化が急速に進み、親族以外の参列を控えるケースや、会食を省略して折詰め弁当を持ち帰る形式などが増加しました。
家族葬よりもさらに小規模な「直葬」や、通夜を省略する「一日葬」。宗教儀式を行わない「無宗教葬」も選択肢として定着しています。
その1 参列者・地域との関係の変化
昭和・平成時代のように近所や会社関係、友人など幅広い人々が集まる「一般葬」は減少傾向にあります。
近所に葬儀を知らせるための飾りつけや大掛かりな受付もほとんど行われなっくなり、外から見ても葬儀をしているとわかりにくくなっています。
その2 多様化・個別化する葬儀スタイル
自宅葬や寺院葬など、会館以外での葬儀も注目されています。
IOT技術を活用した無人対応や、オンライン中継によるリモート参列など新しい形態も登場しています。
菩提寺を持たない家庭が増え、僧侶派遣サービスや無宗教葬の利用も拡大しています。
その3 宗教儀式の簡略化・多様化
仏式葬儀が依然として多いものの、神道やキリスト教、無宗教など宗教・宗派にとらわれない自由な葬儀も増えています。
引用:マキノ祭典
さいごのまとめ
昭和から令和にかけて、日本の葬儀は「大規模・地域共同体型」から「小規模・家族中心型」へと大きく変化しました。背景には社会構造の変化。経済状況。宗教観の多様化、そしてコロナ禍による新たな生活様式の定着などがあり、今後も時代や価値観の変化に合わせて葬儀の形態は進化し続けると考えられます。
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